北信濃神楽採訪

面神楽




須坂市、高山村、中野市、その周辺に「面神楽」「面コ」「面かぶり」という獅子舞、囃子が分布しています。今までに見聞した限りでは、なぜか千曲川右岸だけに分布し、旧豊田村や上水内郡部、長野市の千曲川左岸側には伝播していないようです。飯山市に入ると左岸側の中条、顔戸で行なわれていました。

面神楽は獅子舞の途中で、火男が登場して獅子と対峙するという滑稽な芸能、出し物です。所作、流れは地区により様々です。一つのパターンとして次のようなものがあります。最初に、火男と一人立ちになった獅子が踊りながら対峙します。途中から、獅子は幌に大勢入って大きくなってたたかいますが、火男の刀で倒れて(眠って?)しまいます。勝った火男は浮かれて、獅子にまたがったり、酒を飲んだり、飛び回ったりします。そのうち疲れて座り込んだ火男の背後から目覚めた獅子が襲いかかり、火男は飲み込まれたり、追われたりして終了となります。「奥信濃の祭り考」(昭和57年 著者:斉藤武雄氏)において斉藤氏は中野市厚貝の面神楽を詳しく描写しています。

獅子舞の最中に面をつけた役者が登場し、獅子と対峙するものは他に、奥信濃方面の「天狗と獅子」があります。こちらも滑稽な場面を含んでいますが、天狗がきちんとした着物姿であること、天狗のセリフがあることなど雰囲気はかなり異なります。また、地区によっては「ささら」「獅子あやし」などと言われている、獅子舞の最中に面をつけたものが登場、乱入してくる地域もあります。面神楽から派生したものなのか、その境界はあいまいで面神楽の定義は難しいと思います。このページでは面神楽特有の旋律が使われているものを載せてみました。

面神楽で使われる囃子はやはりくだけた調子のものが多いと思います。火男と獅子がそれぞれ扇、刀、鈴などを持って、近づいたり離れたりする場面があり、似通った囃子を確認できます。また、火男が獅子をやっつけた後で浮かれる場面で、須高地域では似通ったものが分布しています。一方、飯山市の中条、顔戸は他とは異なる旋律、チャンドコを使っていました。面神楽が伝わってきたものの変化が加わったのでしょうか。

火男が登場する冒頭に獅子唄を歌う地区も多いようです。歌詞はまだ確認していません。

分布;似通った囃子を確認できたところ

獅子と火男の対峙


浮かれる火男

異なる旋律の面神楽